本稿は,さいたま市を事例として充電インフラの採用者に着目し,その立地や行動の分析を通して充電インフラ普及パターンの時空間構造とその要因を明らかにすることを目的とした。そして,マップやビジョンといった時空間情報の分析と,各採用者の意思決定や行動の分析とを組み合わせ,充電インフラ普及の特徴について考察した。全国的に充電インフラが大きく普及した2010年代において,さいたま市ではその最初期から充電インフラが市内の全区に立地していた。その後も市内の充電インフラは毎年増加した。採用者の行動を時期区分して分析すると,新規採用を行う業種が時期ごとに異なるという特徴が明らかになった。この過程では,当初採用した充電インフラについて,後に更新・追加を行った採用者も存在した。そして採用者への聞取りを踏まえ,同じグループに属すると名称を基に判断した施設に着目すると,グループ施設にて一斉に充電インフラを採用するという行動を複数のグループが取ったと考えられる。この行動により,各時期で採用者の業種構成に違いが生じたと言える。また,結果として市内のさまざまな区に同時に充電インフラが普及した。